和歌と俳句

日野草城

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葛城のそびらが晴るる寒さかな

焙じ茶の熱しかんばし雪景色

ゑがかざる眉のはかなき風邪かな

笹鳴やあちこち墜つる杉の雪

笹鳴や火桶にかかる女の手

ほどけたる雲に日溢れ春隣

むらさきを垂れてあやめのかへり花

日おもてにあればはなやか冬紅葉

冬薔薇のゆるむつぼみのまくれなゐ

散紅葉はなやかなれば苔寒し

炉開や老父泰山の如く在り

冬日射わが朝刊にあまねしや

かじかめる俸給生活者の流

極月や心惹かるる新書古書

のぼせたる女の顔や年の市

笹鳴や風花の澄む夕あかり

笹鳴や夕影雪の上にも濃き

歳寒うして法学士職を獲ず

外套の累々として面会日

群れて待つ青春の眉鬱々と

濡岩にとどくことなし枯木の陽

冬ぬくし革手袋の革臭ふ

竹木の間を歩く寒日和

笹鳴や炭火たのしきたなごころ

寒牡丹凍てたる地に花低き

日あたりてあはれなりけり寒牡丹