焙じ茶の熱しかんばし雪景色
ゑがかざる眉のはかなき風邪かな
笹鳴やあちこち墜つる杉の雪
笹鳴や火桶にかかる女の手
ほどけたる雲に日溢れ春隣
むらさきを垂れてあやめのかへり花
日おもてにあればはなやか冬紅葉
冬薔薇のゆるむつぼみのまくれなゐ
散紅葉はなやかなれば苔寒し
炉開や老父泰山の如く在り
冬日射わが朝刊にあまねしや
かじかめる俸給生活者の流
極月や心惹かるる新書古書
のぼせたる女の顔や年の市
笹鳴や風花の澄む夕あかり
笹鳴や夕影雪の上にも濃き
歳寒うして法学士職を獲ず
外套の累々として面会日
群れて待つ青春の眉鬱々と
濡岩にとどくことなし枯木の陽
冬ぬくし革手袋の革臭ふ
竹木の間を歩く寒日和
笹鳴や炭火たのしきたなごころ
寒牡丹凍てたる地に花低き
日あたりてあはれなりけり寒牡丹