和歌と俳句

日野草城

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波晴れて七浦の神みなお留守

二三枚風邪の欠勤届かな

わがままのかぎりをつくし風邪の妹

マスクして紅きくちびるかくれけり

手袋をぬぐ手ながむる逢瀬かな

道を問ふ人探梅の志

かがやける障子の穴や冬籠

冬ごもり障子ひらけば庭の景

次の間へ漏れてゐる灯や冬籠

退営や師走はじまる堺筋

汲みたての水うつくしき煤払

道ばたに忘年会の反吐の華

柊を挿すあしもとの灯影かな

笹鳴や水のゆふぐれおのづから

葉ごもりに花ひらきをり冬椿

霜焦の花ばかりなり冬椿

豊臣の大きな桜枯れにけり

鷹ケ峰裾の椢は枯れにけり

草枯やごろりごろりとごろた石

打水のつらゝできたり花八ツ手

隠れ栖むの垣花さきぬ

枯菊やこまかき雨のゆふまぐれ

枯菊を焚く淡き火のうごきけり

いつまでも枯菊を焚くうすけむり

枯菊を焚くかんばせのほてりかな