大寒や半天の碧玲瓏と
冬薔薇の咲くほかはなく咲きにけり
炭の香や嬌やぎそむる吾子の指
寒の闇煩悩とろりとろりと燃ゆ
水洟をかみて五十になんなんと
寒水の雑巾妻の手が絞る
くらがりに茶の匂ひ立つ冬至かな
霜白し妻の怒りはしづかなれど
開運を待つこころにて年の暮
芝枯れて福音のみづみづしさよ
胸廓の裡を想へば虎落笛
病體を拭いてもらひぬ柚子湯もて
いそがしき冬至の妻のうしろ影
寒牡丹咲きしぶり咲きしぶりけり
年暮るる仰向いて句を選みつつ
われひとりきくやラヂオの除夜の鐘
煮凝や凡夫の妻の観世音
凍る闇死にたる猫の声残る
忽ちに食ひし寒餅五六片
夜の雪われを敗残者と言ふや
われ咳す故に我あり夜半の雪
働いて寒き闇より戻りし子
日脚伸びいのちも伸ぶるごとくなり
うれしさよ柚子にほふ湯にずつぽりと
何か愉し年終る夜の熱き湯に