和歌と俳句

年の暮

年の瀬やもの買う人に夜の雨 淡路女

行人に歳末の街楽変り 汀女

はんだいの箍こそみがけ年の暮 万太郎

歳晩の人の流れに洗ひ髪 汀女

杣の子が喰ひふくらみて歳の暮 蛇笏

暮の富士歌の茂吉に会ひに行く 草田男

歳末の生面の茂吉髭真白 草田男

身辺や年暮れんとす些事大事 たかし

歳晩の雨のたまりの小草かな 耕衣

寂しくて道のつながる年のくれ 耕衣

白秋
我が戦 疑ふとには あらなくに 紀元二千五百九十年の 年の瀬今は

墓ぬらす雨のふるなり年の暮 万太郎

見送りし仕事の山や年の暮 虚子

夜半の星ところかへつつ年の暮 石鼎

つかの間の日を雲あひに年のくれ 石鼎

静かさは月のひかりと年のくれ 石鼎

朝々の初日をろがみ年のくれ 石鼎

年の瀬のまづしき蒲団垣に濡る 蛇笏

無住寺の掃除されゐる年の暮 たかし

小気味よき寒さとなりぬ年の暮 立子

世田谷に小家みつけぬ年の暮 波郷

年暮れぬ低き机に膝古び 波郷

どの家の犬にも見られ年のくれ 波郷

うかとして何か見てをり年の暮 虚子

相對ふ三十路の顔や年の暮 波郷

夢に見し事問ひくるや年の暮 波郷

かんざしの目方はかるや年の暮 万太郎

歳晩の月の明さを身にまとひ 汀女

妄執や書を買置かす年の暮 波郷