やかましき姑健なり年の暮 漱石
年の暮ただぼうぼうと風が吹く 虚子
棚落ちて立つ庖刀や年の暮 碧梧桐
桶落ちて立つ庖刀や年の暮 碧梧桐
いささかの金欲しがりぬ年の暮 鬼城
赤彦
歳末の宿人皆國にかへりたり寂しと言ひぬ君に向ひて
年の暮形見に帯をもらひけり 万太郎
歳晩やキネマはねたる市の塵 禅寺洞
小田原の梅のたよりや年の暮 万太郎
ほがらかに晴れし一日や年の暮 石鼎
茂吉
このやまひ 癒したまへと 山川を ゆきゆきし歳の 暮となりぬる
茂吉
暮れの年 妻ともに身を いたはりて 筑紫のくにの 旅ゆかむとす
大雲も小雲もあゆむ年のくれ 石鼎
水戸さまの裏の小梅や年の暮 万太郎
歳晩の電報受けぬ草の宿 月二郎
年の瀬や旅人さむき灯をともす 蛇笏
年の瀬や選句疲れの茶のけむり 草城
真夜中の灯の澄みやうや年の暮 万太郎
わけもなきこといさかひつ年の暮 淡路女
埃浮く尺八に心や年の暮 石鼎
歳晩の皇居の松を仰ぐかな かな女
神垣の内の別墅や年の暮 たかし
年の瀬やかすかにすなるノッキング 石鼎
拾はれてならぬ句帖や年の暮 かな女
年の瀬や洗ひあげたる魚市場 月二郎
山から夜風がごうときて窓をうつ年の暮 山頭火
五段目の猪の行方や年の暮 万太郎
来かかりし歳末街の賑へる 汀女
歳晩の新橋たもと掘りかへす 汀女
雁行に雲荒れもなし年の暮 水巴
歳晩や火の粉豊かの汽車煙 草田男