和歌と俳句

年の暮

海苔の艶玉子の照りや年の暮 万太郎

しなひ合ふてんびん棒や年の暮 万太郎

われなべにとぢ蓋女房年のくれ 万太郎

またしても人のおちめや年の暮 万太郎

年の暮なまじに月のひかりかな 万太郎

静なる我住む町の年の暮 虚子

君は君我は我なり年の暮 虚子

ふとしたることにあはてゝ年の暮 虚子

買ひえたるよきネクタイや年の暮 万太郎

鳥逃げし枝のさゆれや年の暮 万太郎

満月の枯木ごもりや年の暮 波郷

忍びきしごとく浮標浮く年の暮 不死男

年の瀬や続く天気にはげまされ 立子

雑多なる貨車歳晩の汽車となり 誓子

浚渫船去らねば黒き年の暮 不死男

歳晩の白猫庭をよぎりけり 波郷

年の瀬や浮いて重たき亀の顔 不死男

青松の黝ずむ雨や年の暮 波郷

歳晩や妻の使者の友が妻 波郷

病院が栖となりぬ年の暮 波郷

検脈の看護婦仰ぎ年の暮 波郷

痩肩に負ふものに堪へ年暮るる 風生

詠み流す歳晩の句の余情かな 風生

年の瀬や門辺椿のあきのやま 秋櫻子

年の瀬や飯に炊き込む貝ばしら 秋櫻子

補聴器のぴいぴいと鳴く年の暮 青畝

年暮るる無病やうやく倦むごとく 爽雨

構はずてくもる歪田年のくれ 静塔

寂しくて道のつながる年のくれ 耕衣

入院に近火のふた夜年暮るる 爽雨

何かしら遠し遠しと年暮るる 風生