まるき音を冬田へ名刺印刷機
挽きたてを提げて珈琲木菟遠し
冬の日の手紙うごかす秤針
まだ死ねぬ泥濘凍てて星揃ふ
死の灰くる眼鏡冷たき弦の反り
公憤消ゆ初白息の仔犬撫でて
冬の森開いて閉づる人焼く扉
風花の弔旗へさはれるを数ふ
荒原や飯場の声が豆を打つ
一茶忌の日当る蕎麦をすすりけり
ばりと踏む一茶墓参へ栗の毬
墓にあげて北風に交はる二燭の火
冬菊や信濃童女に蔵こぼれ
冬呼んで土蔵は土に土こぼす
しはぶくや一炉が蔵の胎内に
雪催常闇に炉のうづくまり
冬鵙や寂光逃ぐる明取
一茶忌の昏れぎは黒い鰯雲
信濃寒蕎麦すするさへ尿近く
妙高の大足暮るる芒かな
湖脹れて洗菜を打つ渚波
忍びきしごとく浮標浮く年の暮
枯野見る石の狐の尾を握り
鳶争ふ影が枯野に嫁さがし
鵙の声散る水甕の寒曝