寒き眼の孤児の短身立ちあがる
妻編みし手袋ゆるむ右左
木木枯れて手錠の記憶三宅坂
へろへろとワンタンすするクリスマス
汽罐車の朝の図体霜かぶる
寒の鶏啼いて焼跡田舎めく
クリスマス硝子越しなる馬打たる
眼帯や一歩で越ゆる冬の溝
霰打つ模型の鮨をめがけては
海色や揚舟ゆする毛糸編む
目刺みな眼をくもらせてクリスマス
急坂の冬木描かれてあたたかに
寒月の運河に出でて割れ易き
白き馬ゆきて雪片くるを待つ
蕎麦すする越の雪嶺明けわたり
吹きとんで冬田へ溜る波の花
しぐるるや旅信を落すポストの丈
時雨ぐせ砂丘の赤き最上川
浚渫船杭つかみ出す十二月
鉱炉吐く紅蓮のけむり日記買ふ
人中や風船ゆきて雪催
父の忌や足音落つる冬の河
窓ありて聖菓の家の真暗がり
銭湯に漁夫の冷え肌クリスマス
腰かくす雨の磔像菊枯るる
枯野より帰る両手を暗く垂れ