茂吉
きさらぎの日いづるときに紅色の靄こそうごけ最上川より
茂吉
最上川の岸の朝雪わが踏めばひくきあまつ日かうべを照らす
茂吉
最上川みず寒けれや岸べなる浅淀にして鮠の子も見ず
茂吉
最上川みかさ増りていきほふを一目を見むとおもひて臥しゐる
茂吉
最上川の岸にしげれる高葦の穂にいづるころ舟わたり来ぬ
茂吉
ひむがしゆうねりてぞ来る最上川見おろす山に眠りもよほす
茂吉
ひがしよりながれて大き最上川見おろしをれば時は逝くはや
茂吉
最上川の上空にして残れるはいまだうつくしくしき虹の断片
茂吉
わが歩む最上川べにかたまりて胡麻の花咲き夏ふけむとす
茂吉
最上川に手を浸せれば魚の子が寄りくるかなや手に触るるまで
茂吉
あまつ日のかたむく頃の最上川わたつみの色になりてながるる
茂吉
最上川 ながるるがうへに つらなめて 雁飛ぶころと なりにけるかも
茂吉
最上川の 対岸もまた 低くして うねりは見えず 直ぐに流るる
茂吉
秋ふけし 最上の川は もみぢせる デルタをはさみ 二流れたる
茂吉
おほどかに 流れの見ゆる のみにして 月の照りたる 冬最上川
茂吉
最上川 逆白波の たつまでに ふぶくゆふべと なりにけるかも