和歌と俳句

中尊寺

五月雨のふり残してや光堂 芭蕉

蛍火の昼は消つつ柱かな 芭蕉

苔青き踏むあたりにも霜柱 碧梧桐

清水ある坊の一つや中尊寺 碧梧桐

宮沢賢治
中尊寺青葉に曇る夕暮のそらふるはして青き鐘鳴る

茂吉
妻とふたり つまさきあがりに のぼりゆく 中尊寺道 寒さ身に沁む

茂吉
金堂は 遠世ながらに 年ふりぬ 山の火炎も ここに燃えねば

茂吉
中尊寺の 年ふりしもの 見まはりて やうやくにして 現しきがごと

人も旅人われも旅人春惜しむ 青邨

花散るや紺紙金泥の鸚鵡経 青邨

曼陀羅に落花ひねもすふりやまず 青邨

たえまなき落花のしたのみやげうり 青邨

身に沁みて仏体近き闇に立つ 楸邨

瑠璃光仏閻浮の闇は虫しぐれ 楸邨

磬架鳴り秋風堂を撼り去る 楸邨

瑠璃光仏とわが見しはさむき闇なりき 楸邨

巣立鳥秘仏開扉に声とほし 秋櫻子

梅雨秘仏朱唇最も匂ひける 秋櫻子

青梅雨の金色世界来て拝む 秋櫻子

白珠や寺道寂びて花馬酔木 不死男

光堂出るや花菜を曲げる風 不死男

経文の金泥燦と濃山吹 不死男

巣づくりの鳥影窓に朱唇仏 不死男

みちのくに光堂ありを摘む 青邨

梅雨の月をましぬ瑠璃光院光 青邨

金色に在す雪恋厨子の中 静塔

雪知らに三十二相黄金咲く 静塔