和歌と俳句

梅雨

梅雨傘をさげて丸ビル通り抜け 虚子

休んだり休まなんだり梅雨工事 虚子

しげくして雲たちこむる梅雨の音 蛇笏

郷愁は梅雨の真昼の鶏鳴くとき 草田男

汽車発着空樽の胴梅雨が鳴らす 草田男

袋町梅雨の弱星かかげ棲む 草田男

仄白し梅雨降り寄れば風押しゆき 草田男

梅雨の漏飯食ふひまも子が騒ぐ 楸邨

梅雨の漏防ぐバケツもまた漏りぬ 楸邨

梅雨はげし右も左も寝てしまふ 波郷

梅雨の門傘を掴みて立ち出づる 波郷

梅雨の街あはれ出水のなつかしき 波郷

駒場町長梅雨坂を樹を奔る 波郷

梅雨の町向日葵がくと坂に垂れ 波郷

梅雨の水ながれながれてゆふべとなる 草城

ただれたる胃壁に夜もひびく梅雨 草城

洋傘に顎のせて梅雨行くところなし 楸邨

吾子音読梅雨の点滴逢ひ離れ 楸邨

梅雨さむく犬が飯食ふわれを見る 楸邨

梅雨の漏笑へば笑ふ子に囲まれ 楸邨

梅雨といふ暗き頁の暦かな 虚子

梅雨のまのひととき映ゆる金華山 蛇笏

梅雨の奥深夜砲声沖よりす 不死男

梅雨の街青年の喇叭夜夜はげしく 不死男

梅雨寒し教会堂の昼の鐘 占魚