広き道一筋夏の園に在り
蟇の居る石に玉巻く芭蕉かな
師僧遷化芭蕉玉巻く御寺かな
箏の前に人ゐずなりぬ若楓
棕櫚の花句作につけて見る日かな
田植すみて東海道雨の人馬かな
雑談も夜涼に帰せり灯取虫
灯取虫燭を離れて主客あり
灯ともせば早そことべり灯取虫
舟べりにとまりてうすき螢かな
寝し家を喜びとべる蛍かな
蛍追ふ子ありて人家近きかな
翡翠去つて人船繋ぐ杭かな
福を待つ床の置物夏座敷
今日の日も衰へあほつ日除かな
心中の屍つつむ土用浪
茣蓙取れば青き祭の畳かな
我心或時軽し罌粟の花
うき草のそぞろに生ふる古江かな
蟻の国の事知らで掃く帚かな
清水のめば汗軽らかになりにけり
汗をたたむ額の皺の深きかな