重の内暖にして柏餅
目立たぬや同じ色なる更衣
昂然と泰山木の花に立つ
えにしだの黄色は雨もさまし得ず
見るうちに薔薇たわたわと散り積る
麦の穂の出揃ふ頃のすがすがし
此宿はのぞく日輪さへも黴
桑の実や父を従へ村娘
たたみ来る浮葉の波のたえまなく
藻の花や母娘が乗りし沼渡舟
釣堀の日蔽の下の潮青し
松魚舟子供上りの漁夫もゐる
老い人や夏木見上げてやすらかに
ユーカリを仰げば夏の日幽か
急がしく煽ぐ団扇の紅は浮く
玉虫の光を引きて飛びにけり
夏山やよく雲かかりよく晴るる
這ひよれる子に肌脱ぎの乳房あり
大敷の網に夏海大うねり
泳ぎ子の潮たれながら物捜す
へこみたる腹に臍あり水中り
親竹に若竹添へて三幹竹