和歌と俳句

薔薇

各々の薔薇を手にして園を出づ 虚子

今朝も亦露のさうびをはさみけり 虚子

徐ろに歩を移し剪るさうびかな 虚子

庭めぐりさうびを摘んで手にしつゝ 花蓑

タイピストコップに薔薇をひらかしむ 草城

虫つきし薔薇をのぞける夫婦かな 石鼎

子守子の白粉つけて薔薇の園 石鼎

手の薔薇に鉢来れば我王の如し 草田男

垣さうび一重の白をよしと思ふ 青邨

千々に置く白きさうびの花の露 花蓑

クリームの重つて濃し花さうび 青邨

肋木のあばらは薔薇の垣の上に 誓子

薔薇垣の夜は星のみぞかがやける 誓子

垣の薔薇白きがちりて径しろし 秋櫻子

白薔薇は雨に耐へをり明日知らず 楸邨

薔薇の息きく胎動をきくごとく 麦南

薔薇むしる垣外の子らをとがめまじ 久女

一束の緋薔薇貧者の誠より 久女

ばら薫るマーブルのに哀詩あり 久女

かいまみをゆるさぬ垣の薔薇咲けり 草城

病院の匂ひ抱ける薔薇のにほひ 多佳子

テームスのふなびとに寄せ窓の薔薇 杞陽

見るうちに薔薇たわたわと散り積る 虚子

海港に薔薇咲き人はうすものを 青邨