和歌と俳句

日野草城

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山風にはらはらとべり糠蛍

一つゐて中有にあそぶ蛍かな

ゐて蘆の一穂の見ゆるかな

初蝉の清水阪をのぼりけり

初蝉のしきりになくや音羽山

しづけさに初蝉のまたきこえけり

みよらかな砂に蜚ばざるみちをしへ

みづすまし猫の屍とあそびをり

まなかひの白百合かをる小午餐かな

朝顔の藍のひさしき日蔭かな

ひそまりて咲きはなやげる牡丹かな

ぼうたんの花のすぼまるはやてかな

風晴れて白雲徂くや牡丹園

ふりむきし遠くの顔や牡丹園

月さして遠き牡丹も見えわたる

湯あがりて裸けむらふ牡丹かな

芍薬や横顔うすき病上り

ウエートレス昼間はねむしアマリリス

ひともとの咲きつぎたのしけれ

外風呂やの花の夕かげり

タイピストコップに薔薇をひらかしむ

みるからにつめたき水のひつじぐさ

古水にうきくさの葉のうすみどり

青萱の雨のはげしくなりにけり