遠き灯の一つ二つや月見草
砂を踏む音ばかりなり月見草
わかものの口笛娯し月見草
月見草月のけはひはありながら
停りゐる古きフオードや花うばら
干草に馭者寝て鞭を鳴らしけり
干草のおとろへみえて香に立ちぬ
古坪のおもてに桐の落花かな
栴檀の花のさかりの睡き昼
のうぜんや眞白き函の地震計
めざましく日のあたりゐる新樹かな
ばさばさと柿の若葉に風出たり
ほそぼそと降りいでにけり若楓
醜の男のうまいのはてず木下闇
たはむれのさくらんぼうのつぶてかな
逢はぬ宵さくらんぼうも飽きにけり