薫風の波をよろこぶゐもりかな
大阪の船場の庭の牡丹かな
湯あがりの膚のたのしき薄暑かな
持ちそめの扇子のかたき薄暑かな
しろがねの刃のためらはぬメロンかな
聴いてゐる耳をはなるる河鹿かな
ぼうたんの葉の蓁々と花了る
青梅をちぎりて持ちて湯の道を
小倉山夏うぐひすに汗ばみぬ
山水のひびく紫白のあやめかな
嵐山のおもてに夏の雨うごく
石山のあやめの花の薄暑かな
みささぎの曇りたまへり雨蛙
青蛙大和の国に獲て来つる
錫蘭の葉のしげりつつ青蛙
蟻地獄ほつりとありてまたありぬ
夏の山くだる薄暑の径急に
友山の夕むらさきや夏の山
青き夜の来ること遅し水都祭
をさなごのひとさしゆびにかかる虹
杉山や夏うぐひすに青き雨
籐椅子にオレンヂエード待つ間あり
自動車のさましたる眼に灯取虫
ピアノ弾くをさなきものや避暑の荘
けはひせぬ顔のしたしさ避暑の妻
泳ぎゐるかんばせかたきをとめかな
照らさるる葉のあをあをと夜涼かな