ゆきちがふいづれもセルのをとめたち
二三點雨のかわかぬセルの肩
アネモネやひとりのお茶のしづこころ
青蔦を遠ざかりたる西日かな
初蝉ときづきてさやにきこえけり
初蝉やしきりにひかる蔦若葉
初蝉のひとつのこゑのつづきけり
初蝉の樹のゆふばえのこまやかに
青空を蜚ときのありみちをしへ
夏の蝶仰いで空に搏たれけり
空梅雨の草木しづかに曇りけり
下り来てしづかな淵の梅雨曇
なまなまと緋の濡れてゐる水着かな
脚ながく水着のをとめ歩き去る
削り氷の鎗や穂高や出来にけり
じやがいもの花のさかりのゆふまぐれ
扇風機つばさが消えて風となる
遊ぶ蠅すず風にまた乗りにける
書記・雇昼寝を愉む簿書の蔭
足の裏さすりて端居たのしけれ
砌這ふ蟻をながめて涼みけり
いとけなき柘榴の壺が揺れてゐる
寝みだれてあるらむ蚊帳のあやなくも