梅天や浪をかぶりし岩の色 石鼎
梅天や生死もわかず苫かかる 石鼎
梅天や古葉おとして大八ツ手 石鼎
梅雨曇る心の底にひびくもの 石鼎
梅天や筍竹にならんとす 石鼎
澤瀉の葉かげの蜘蛛や梅雨曇り 蛇笏
うるみゐし星やがてなし梅雨の空 石鼎
梅天やもたれかはしし薮畳 青畝
梨の葉の風に雫や梅雨曇 石鼎
押しよするさまに日ざすや梅雨曇 石鼎
丹沢も石老山も梅雨ぐもり 青邨
下り来てしづかな淵の梅雨曇 草城
梅天や鎖ぢて久しき大ピアノ 石鼎
梅雨ぐもり、見たことのある顔がくる 山頭火
梅天やにじみ霽れゐる一所 石鼎
梅天や而して夕陽まよこより 石鼎
梅天や工場窓より桐広葉 石鼎
網に入るあをさばかりや梅雨曇り 亞浪
梅雨ぐもり写経の硯洗ひけり 淡路女
梅天の靈にのぼりて香一縷 蛇笏
梅天や骨壷さめぬ膝の上 蛇笏
明らみて一方暗し梅雨の空 虚子
梅天をとべる途中の鴉かな 耕衣
梅天を咳し横切る鴉かな 耕衣
梅天やさびしさ極む心の石 汀女
梅天や帆綱数条緊張し 青畝
白緑の湖色を畏る梅天下 風生
白き鯉橋の蔭出ず梅雨ぐもり 悌二郎