袷着てほのかに恋し古人の句
柿の葉のかへす光や初袷
老木に紅さす楓若葉かな
梅雨の街に塵紙買うて戻りけり
五月雨や水にうつれる草の裏
灯取虫狂ひ狂へる火屋の熱
縁を日去つて曝書全し蝉時雨
旱天によごれて高き葉麻かな
水打てばひたぬるる石や蟻涼し
棚杭に早も蜻蛉や花胡瓜
午寝人の腰ほそぼそと一重帯
花桐に二階の人の午寝かな
深々と草に隠れぬ濁り鮒
南風や潮流に舳むけて針魚舟
友思へば面影来るや夏の月
杜若見てたつ縁の主客かな