和歌と俳句

原 石鼎

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山の色釣り上げしに動くかな

夜振の火見て居る谷の草間かな

生節を又ことづかる郵便夫

山影のひたる堰あり青芒

水上にはや谷くれぬ青芒

蛇踏みし心いつまで青芒

杣が灯す柱の影や青芒

夜々あやし葎の月にあそぶ我は

杣がかやの紐にな恋ひそ物の蔓

山風の蚊帳吹きあぐるあはれさよ

山の娘の風邪にこもれる蚊帳かな

奥山に売られて古りし蚊帳かな

蚊帳つりてさみしき杣が竈かな

老杣のあぐらにくらき蚊遣かな

山家人したたかくべる蚊遣かな

崖錆にいたみし軒の蚊遣かな

老杣の蚊払ふ団扇ひびきけり

老杣の早寝の蚊帳に蛍かな

山門の日に老鶯のこだまかな

百合たむけて木の間にありぬ山の墓

桑摘や煤にいぶせき家棄てて

檜笠きて頬の若さや山家妻

藍干すに仮の檜笠や山家妻