和歌と俳句

蚊遣り 蚊遣火

沓作り藁打宵の蚊遣哉 其角

山くまにしらぬ坊見る蚊遣かな 北枝

わき道を跡からもどる蚊遣り哉 千代女

骨折をくべて木挽のかやりかな 也有

もやすでも消すでもなふて蚊遣り哉 也有

蚊はこちへはいる隣のかやり哉 也有

三軒家大坂人のかやり哉 蕪村

蚊やりしてまいらす僧の坐右かな 蕪村

学びする机のうへの蚊遣かな 蕪村

いざさらば蚊やりのがれん虎渓まで 蕪村

腹あしき隣同士のかやりかな 蕪村

垣越て蟇の避行かやりかな 蕪村

いとまなき身にくれかかる蚊やり哉 蕪村

雨にもゆる鵜飼が宿の蚊やりかな 蕪村

一日のけふもかやりのけぶりかな 蕪村

かやり火のうたてのこるや夜の儘 太祇

世やうつりかはらの院の蚊遺かな 召波

今咲し花へながるる蚊やり哉 一茶

しらじらと白髪も見へて蚊やり哉 一茶

夕月の正面におく蚊やり哉 一茶

蚊やりして皆おぢ甥の在所哉 一茶

蚊いぶしもなぐさみになるひとり哉 一茶

夜咄のあいそにちよいと蚊やり哉 一茶

駒込の不二に棚引蚊やり哉 一茶

蚊いぶしをもつて引越木蔭哉 一茶

夕月の友となりぬる蚊やり哉 一茶