和歌と俳句

小林一茶

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楽剃や夕皃棚の下住居

新しい水湧く音や井の底に

大水や大昼皃のけろり咲

形代に虱おぶせて流しけり

夜咄のあいそにちよいと蚊やり

大門や凉がてらの草むしり

駒込の不二に棚引蚊やり哉

短夜や河原芝居のぬり皃に

月さすや紙の蚊やでもおれが家

砂山のほてりにむせぶ小舟哉

云ぶんのあるつらつきや引がへる

したはしやむかししのぶの翁椀

夕凉や汁の実を釣るせどの海

うす縁や に吹かれて夕茶漬

大の字に寝て見たりけり雲の峰

うす墨を流した空や時鳥

水桶の尻干日なり羽蟻とぶ

花御堂月も上らせ給ひけり

としといへば片手出す子や更衣

手にとれば歩行たく成る

ざぶざぶと白壁洗ふわか葉

小諷ひの尻べたたたく扇哉

五月雨や天水桶のかきつばた

はつ蛍つひとそれたる手風哉

襟までも白粉ぬりて田植