卯の花にしめつぽくなる畳哉
大家根を越へそこなひし蛍哉
飯櫃の蛍追ひ出す夜舟哉
昼の蚊やだまりこくつて後から
僧になる子のうつくしやけしの花
満月に暑さのさめぬ畳哉
夕立のとりおとしたる出村哉
寝莚や窓から這入る艸いきれ
山門の大雨だれや夏の月
山寺は碁の秋里は麦の秋
鰹一本に長家のさはぎ哉
御仏や生るるまねに銭が降る
鮓に成る間を配る枕哉
日帰りの小づかひ記す扇哉
とびくらをするや夜盗と時鳥
蚤焼て日和占ふ山家哉
一村の鼾盛りや行々し
洪水やかはほり下る渡し綱
夕立のすんでにぎはふ野町哉
団扇の柄なめるを乳のかはり哉
田よ畠よ寸馬豆人雲の峰
おもしろう汗のしとるや旅浴衣
うつくしや雲一つなき土用空
子どもらがしやつくりするやわか葉陰