能なしの寝たし我をぎやうぎやうし 芭蕉
行々子鳴や夜川の笠の端 土芳
むさし野に声はこもらず行々子 千代女
言ひまけて一羽は立か行々子 也有
葭雀や暁て一二のみをつくし 几董
行々しどこが葛西の行留り 一茶
雷のごろつく中を行々し
行々し大河はしんと流れけり 一茶
一村の鼾盛りや行々し 一茶
枝川や立ち別れ鳴く行々子 子規
よしきりの聲につゝこむ小舟哉 子規
蘆原の中に家あり行々子 子規
左千夫
荒玉の長き年月住ひ居りあやしこの夏葦切の鳴く
左千夫
垣外田の蓮の広田を飛び越えて庭の槐に来鳴く葦切
左千夫
五月雨に茶を抹き居れば行々子槐が枝に声断たず鳴く
左千夫
青葉さす槐の枝に身をかくり声は鳴けども見えぬ葦切
左千夫
五月雨を朝寝し居れば葦切が声急き鳴くも庭の近くに
節
垣の外ははちす田近み慕ひ來て槐の枝に鳴くかよしきり
節
栗の木の花さく山の雨雲を分けくる人に鳴くかよしきり
節
葦村はいまだ繁らず榛の木の青葉がくれに葭剖の鳴く
左千夫
柿若葉ゑんじゅ若葉のゆふやみに鳴くはよしきり声近くして
砂を踏む道しばし来しが行々子 碧梧桐
凪ぐまでを吹く夕風や行々子 碧梧桐
流れ藻も風濁りして行々子 碧梧桐
葭切に臥竜の松の茶店かな 碧梧桐
茂吉
さみだれはきのふより降り行々子をほのぼのやさしく聞く今宵かも
赤彦
真菰草風通しよき池の家の晴れのいち日よしきり鳴くも
赤彦
物おもひ昼寝に入れる夢の人の家をしづかによしきり鳴くも
漁小屋に竹生えつ居鳴く葭切か 碧梧桐
牧水
あめつちの青くけぶれる河の辺の葦原に巣をまもる葭切鳥