和歌と俳句

さくらんぼ 桜桃

来て見れば夕の桜実となりぬ 蕪村

実ざくらや死のこりたる菴の主 蕪村

晶子
二寸ほど高かる人と桜の実耳環にとりし庭おもひ居ぬ

晶子
袂より二つつなげる桜の実おとせし君をおもひ初めてき

茂吉
ま夏日の日のかがやきに櫻實は熟みて黒しもわれは食みたり

晶子
さくらんぼ足もとに居ぬ君と乗る馬車の床なる火のさくらんぼ

晶子
てのひらにさくらんぼ置き何となく后ごこちす夏はめでたし

道端の義家桜実となりぬ 鬼城

口臙脂のたまむし色に桜んぼ 石鼎

雑司ケ谷雨のはれ間の桜んぼ 石鼎

葉二枚のはざまに赤し桜んぼ 石鼎

熟れかけて紅躍りゐる桜んぼ 石鼎

さくらんぼふくみ語るやあどけなう 淡路女

くちびるに触れてつぶらやさくらんぼ 草城

たはむれのさくらんぼうのつぶてかな 草城

逢はぬ宵さくらんぼうも飽きにけり 草城

山風にあらはれ見ゆる桜んぼ 石鼎

桜桃のみのれる国をまだ知らず 鷹女

竿がとどかないさくらんぼで熟れる 山頭火

待つてゐるさくらんぼ熟れてゐる 山頭火

桜桃を五つ房もつて寝る子かな かな女

ひさびさと逢つてさくらんぼ 山頭火

兄がもげば妹がひらふさくらんぼ 山頭火

この恋よおもひきるべきさくらんぼ 万太郎

唐門のほとりに拾ふ桜んぼ 茅舎

桜の実紅経てむらさき吾子生る 草田男

汽車に積み瑞の桜ん坊ロンドンへ 青邨

枝かへてまださくらんぼ食べてをる 素十

城は赤土実桜こぼれ晴れつづけ 草田男

桜の実教師身辺土平ら 草田男

桜んぼくろき雀のあたまかな 茅舎

さくらごをたたみにならべ梅雨の入り 犀星

さくらごは二つつながり居りにけり 犀星

さくらごの籠あかるさよ厨口 犀星

八一
あうたうの えだにこもりて わがききし さつきのえだの をとめらがうた

八一
あうたうの えだのたかきに のぼりゐて はるけきともの おもほゆるかも

八一
のぼりゐて わがはくたねの ひとつづつ くさにかくるる あうたうのえだ

実桜や折紙細工の本が形見 草田男

実桜やピアノの音は大粒に 草田男

茎右往左往菓子器のさくらんぼ 虚子

実ざくらやをとめさびつつ人みしり 草城

均斉に桜桃並ぶ心安からず 波郷

桜桃を洗ふ手白く病めりけり 波郷

子なければ妻とたうぶるさくらんぼ 風生

桜の実光は解かる赤児の眼 草田男

桜桃持てきしひとにその後逢はず 林火

櫻の実垂れて暮れざり母の町 林火

桜桃を洗ふ音個室ひびきけり 波郷

校庭や乳歯が抜けてさくらんぼ 鷹女