世界病むを語りつつ林檎裸となる
鶯や友真直ぐに獄ゆ出で来し
峰鶯谷鶯へ四肢投げ出す
岩襖蝶来て頭上めぐり去る
舌と歯に春風あたる眼をつむり
水煙をふり放ちつつ木の芽渓
山吹流す岩門の彼方本流過ぐ
吾子の春額を仰ぎて壁たたく
桐の花妻に一度の衣も買はず
青雲白雲夏の朝風一様に
萬緑の中や吾子の歯生え初むる
赤んぼの五指がつかみしセルの肩
梅雨さやぐ灯の床吾子と転げ遊ぶ
睡蓮の明暗たつきのピアノ打つ
遍路脱ぐ今日のよごれの白足袋を
梅雨の地にはずまぬ球は投げあげる
枕木を五月真乙女一歩一歩
吾子も亦汗の蓬髪瞳澄めり
城は赤土実桜こぼれ晴れつづけ
樟大樹孤独の翡翠翔けまどひ
翡翠去つて指に指環の残るのみ
日のひかり蟻地獄さへ樟のにほひ
桜の実教師身辺土平ら
読書の餓ゑ葉桜日増し公園かくす
向日葵に澄む即興の子を守る歌