和歌と俳句

蝶颯つと展墓の花を打ちにけり 蛇笏

塀越えて蝶一つまたひとつ 淡路女

生籬に日もすがらなる蝶二つ 石鼎

蝶低し花見もどりの人の目に 石鼎

蝶々にゆれかはりつゝ垣根かな みどり女

芍薬の芽に触れてゆく胡蝶かな 烏頭子

つく杖の銀あたたかに蝶蝶かな たかし

三つ蝶の巴翻りにあがりけり 烏頭子

蝶々に小さき花の撓みけり 烏頭子

岩の間に人かくれ蝶現るる 虚子

蝶々の高く上るは潦 虚子

山吹の日蔭へ蝶の這入りけり たかし

おのづから蝶のかよひぢわかれみち 烏頭子

ふかぶかと森の上なる蝶の空 茅舎

泣き虫の父に眩しや蝶の空 茅舎

蝶の空七堂伽藍さかしまに 茅舎

蝶々にねむる日蓮大菩薩 茅舎

一蝶に雪嶺の瑠璃ながれけり 茅舎

酔ひしれた眼にもてふてふ 山頭火

やたらに咲いててふてふにてふてふ 山頭火

朝ぐもりの草のなかからてふてふひらひら 山頭火

海空につゞきて蒼き胡蝶かな 泊雲

大いなる門の内より春の蝶 みどり女

蝶とまる見はらし台に腰おろす 野風呂

歯朶の蝶湖の風たち歯朶に消ゆ 楸邨

あてなくあるくてふてふとあとになりさきになり 山頭火

てふてふもつれつつ草から空へ 山頭火

山はしづかなてふてふがまひるのかげして 山頭火

初蝶のうす紫にとび消えし 立子

初蝶や深沢村へさしかかり 立子

蝶の腹やさしくは見る歯朶の上 犀星

初蝶のこぼるるばかり黄厚く 青邨

蝶とぶや郵便函もさしのぞく 素十

庭に立つ母に明るき蝶の空 素十

方丈の大庇より春の蝶 素十