とらへたる蝶の足がきのにほひかな 草田男
十ツ分の休みのけなき蜆蝶 草田男
大いなる弧を描きし瞳が蝶を捉ふ しづの女
初蝶の朱金色に飛べりけり 青邨
蝶ひかる風ふき神は寝たまへり 桃史
愁あり歩き慰む蝶の昼 たかし
潮ぬれの藁垣つたふ蝶々かな 耕衣
人間のことのはにとぶ蝶々かな 耕衣
初蝶を夢の如くに見失ふ 虚子
初蝶のただよふと見てともゑなす 悌二郎
かけりたる蝶おほらかに返し来る 汀女
岩襖蝶来て頭上めぐり去る 草田男
蝶もとびふるさと人もたもとほり 虚子
初蝶の燦爛としてやすらへり 青邨
初蝶の紋ぞ仏の燦爛を 青邨
吹かれつつ蝶的確に花につく 彷徨子
蝶とまり獅子の睡りを醒しけり 虚子
芝原にましろき蝶の三つばかり 石鼎
いとひくき白蝶ばかり野の原に 石鼎
あをあをと空を残して蝶別れ 林火
黙祷の子らのうへ白き蝶わたる 林火
初蝶やわが三十の袖袂 波郷
一蝶の舞ひ現れて雨あがる 虚子
鯉の背に初蝶来れば父恋し 欣一
見初めたるあとはや次ぎの蝶来る 誓子
三山の三つを眼にせり蝶の昼 たかし
山国の蝶を荒しと思はずや 虚子
天よりもかがやくものは蝶の翅 誓子
吾妻の人と別れて蝶を追ふ 普羅