強東風の堤はこへぬかけ下る
ゆきやなぎ人のにほひを厭ひそめ
ゆきやなぎ人をいとひつひとを恋ふ
春の夜をさむしと言ひつ火を掻きぬ
子らの声春夜の門を馳けきたる
初蝶のただよふと見てともゑなす
鏡中の老醜誰ぞ春の風邪
海へ墜つ椿このときさけびつゝ
春の水のぞきてをらず何か棲む
野梅咲き風男体を研く日なり
古れば滅ぶ春園の椎もほかならず
立枯の木空余寒の雲とざす
錆泛けし水も芹生にせせらげる
春寒や髪なく並ぶ雛がしら
春林の奥の泉へけもの道
春いく日甕のたなごの彩も見せず
梅白し発掘土偶の駒の胸
小なだれに炭小舎揺らぐ融雪季
雪嶺の線そらに溶け榛咲けり
雪ゆるぶ曇り日つづく榛の花
奥まるも川狭まらず遅ざくら
春嶺にゐし雲夕べわれつつむ
夜は夜で暮春の雲に谿噎ぶ
木々芽吹き断橋渓に景を添ふ
山吹やガレの幾筋谿へだて