夜は小雨梅園の香をおもひをり
春あけぼの金泥残し鯉沈む
雀地に啄むほどに暖かし
彩淡き連翹曇いらだたし
連翹に烈風唸りはじめけり
菜の花や幼なに捕れて螺泥鰌
水芭蕉融け先んぜし雪凝りて
残雪の穢とて松かさ青松葉
残雪を軋ませつ摘む蕗の薹
瑠璃沼も雪解さなかと溢れ落つ
松毟鳥磐梯夕べあをみ来て
うぐひすや夕ささなみを沼の冲
逝く春を曇り井蓋の竹あをし
薪白く置く浅春の雑木山
堰の戸の百千の田螺ひとつ落つ
さざなみをわずかに凌ぎ真菰生ふ
山独活の芽の紅玉に雪解どき
麗日の来書の一つ措きて出づ
沈丁の一夜雪降りかつにほふ
鶯の巣や高く幽かに雛うつくしく
春草に野はまろし白き道をのせ
木いちごの花涵さむと水をとる
囀のなかりし今日とふと気付く