暁やうまれて蝉のうすみどり
堰ちかく湛へし水や菖蒲園
花棕梠や昔ながらの大藁家
町中にある牧場や桐の花
十ばかり熟れて今日摘む苺かな
潮の香や籬々の花葵
かはたれの水ふかくゐる金魚かな
筍や雨の親竹うちかむり
門川の藻がにほふなり五月雨
大風の葭切鳴くや葭の中
釣堀の垣の茨さかりかな
春蝉や多摩の横山ふかからず
梅天やしろしろとある梨袋
みづ垣やこぼれて白き柘植の花
芍薬の咲ける井ありて水を乞ふ
梟の声遠かりし端居かな
畦に咲く遅きあやめや田草取
凌霄の花のふふまる祭かな
門を過ぐおさなき声は蛍狩
晩涼の芭蕉のみどり見て飽かず
畦みちにかはほりの舞ふ祭かな
苺つむ手籠は蕗の葉もておほふ
たかむらを相へだてたる麦を打つ
麦は黄に春蝉とほし暮れぬべく
初蝉や麦は刈るべく穂に熟れぬ
浦凪げど鵜のゐる巌は波をくだく