礁うつ波のくだけは麦に散る
みぢか夜の潮さゐ家をおもはしむ
昼顔はみな日に向けり海は凪
鮑採るくるしき息は岩に吐く
鮑採る岩根はあおく透り見ゆ
埼とほく波はあがれりいちご畑
梅雨の日の烈しくさせば罌粟は燃ゆ
桑剪るや桑にも来鳴く葭雀
合歓の花ほのかなれども水くらし
日車の影は日覆にまぎれなく
初蝉や疲れて街をゆきしとき
朝の音蝉のやうやく耳につく
水を見てゐれば蛍うつしけり
鮎釣や野ばらは花の散りやすく
波ゆけば畦は越ゆべき田を植うる
植田より畦まさをなり走りたる
早乙女にまちかく利根の鳰鳴けり
葵さく門べにわらべ漕ぎよする
よしきりや閘門舟をはきて閉づ
閘門をひらけば渦の浮葉かな
トマトもぐ手を濡らしたりひた濡らす
夾竹桃窓に燃ゆれば事務に倦む
灯蛾の来て夕顔うてば宵更けぬ
黍のみち水着の子らを連れもどる
闇ひさし蚊火ちさけれど寄りつどふ