夏立つやいなやに目立つ肩の痩
葉ざくらや宙に翅澄む虻いくつ
葉ざくらや月日とびゆくわれの外
黒南風や目高が鉢の外に死す
虹ふた重つたなき世すぎ子より子へ
初袷青春すでに子らのもの
夕栄もなく谿暮れぬ朴の花
誘蛾灯野は六月のその暗さ
繭かけつ思ひまどへる蚕あり
筆掴いて梅雨の曇りかたそがれか
あとさきに友待つ泉掬みこぼす
五月富士夜空に立つを疑はず
夢すでになきにはあらず水中花
一湾の朝凪漁舟撒き散らし