青ざめて人らあゆめり朴の花
灯蛾舞ふをしたしみ目守りゐしこころ
蚊火尽きむ更けむとおもひ蚊帳を吊る
涼しさは巷音更けて絶えしとき
ひと夜さをひとり寝たれば明易き
ダリア燃え浅寝の眼にはゆらぐなり
明けやすき窓がうれしくあけはなつ
梅雨の窓にうたふがきこゆさびしきか
麻すでに咲くべくなりぬ日をかぞふ
もてあそぶうちはがしろく悔をさそふ
ガソリンがにほひ葉櫻蕚をふらす
草踏めばあをきがとべり青かへる
初夏の風干せし帽子をくつがへす
五月来ぬ朝の嗽は井を汲める
洗面器著莪のうつりて汲みあふる
園の花絶へしより夜々椎にほふ
椎にほひ夜の戸をたつもおくれがち
人が病むあをみなつきを椎にほふ
初蝉のにいにいが鳴き朝曇
虫捕る子夜の向日葵の貌に遭ふ
もどり来てわが家暮れゐし蝉の聲
樹々暮れて水打ち足せり蝉ひとつ