サルビアの上忘れゐし海のいろ
羽化了へて息づくを蝉捕へらる
家では犬が死ぬやも風の黒牡丹
拾ひ秘すは今くずほれし白牡丹
風雲り秘色の牡丹散つてなし
渓若葉鴉華麗に舞ひくだる
初夏の雲山草莟まざるはなし
緋の牡丹群蝶夜の海を越ゆ
滝音にむらさき遅き渓の藤
青梅雨のいや青かれと蕗に降る
雨冷えの膝正しをりほととぎす
木曾駒へ酸葉の荒穂直立す
木曾冠者火花とは散り九輪草
みどりさす顕現壁画群鶴図
谺にはあらず郭公谷距つ
水無月の白樺細きほど白し
放つ蛍調度の隙に墜ちし後
鏡面にひかりを重ね蛍落つ
気負ふなき百姓馬や野馬祭
素破事故の夏野四方より武者集ふ
夏鶯神事の競馬だれしとき
野馬追の黒駒つなぐ夜の屋後