和歌と俳句

若葉

藁屋根に染まりて崖の若葉かな 石鼎

若葉そよがず葬の鉦ひびくなり 山頭火

窓の灯はみな消えて若葉そよげり 山頭火

列なして読む児等に若葉濃けれ 山頭火

若葉見る机に肱の白さかな 石鼎

兵隊おごそかに過ぎゆきて若葉影あり 山頭火

いちにちのつかれ仰げば若葉したたりぬ 山頭火

動物園の裏の坂あがる若葉かな 万太郎

赤彦
日もすがら若葉のうへの曇り空暮るれば赤き月出にけり

赤彦
馬鈴薯買ひて妻かへり来ぬ澤窪の若葉くもれる夕月夜の道

牧水
青臭き 香さへ漏れ来て 曇り日の 窓辺のわか葉 風立つらしも

千樫
曇り日の若葉やすらかに明るかり墓地を通りて湯に行くわれは

千樫
ひそかごと持つとはいはじ曇り日の若葉明るく親しきものを

若葉若葉かがやけば物みなよろし 山頭火

監獄署見あぐれば若葉匂ふなり 山頭火

あきらかに雀吹かるる若葉かな 石鼎

坂に来てもどかしき車や四方若葉 みどり女

澄む虻を避けて通りし若葉>かな 花蓑

枝蛙鳥のごと鳴く若葉かな 花蓑

風先に枝さし揃ふ若葉かな 龍之介

尊しや若葉を盛れる東山 龍之介

晶子
いと小き橋より下に万木の若葉こもれる渓の朝かな

利玄
若葉樹の繁り張る枝のやはらかに風ふくみもち揺れの豊けさ

利玄
向山の雑木の若葉風とほり揺れいちじるく夏さりにけり

利玄
昼の雨はれんとすなり雲にふくむ真昼の光若葉の明るさ

獅子の毛の日にあざやけき若葉かな 石鼎

大風に池の面うつ若葉かな 石鼎

寂しさや若葉にそそぐ昼の雨 草城

白秋
谿ふかくたぎつ瀬の音もまじるらし嵐は明し一山若葉

千樫
青空を雲ゆくなべに身のめぐり暗く明るくゆらぐ若葉を

常夜燈夜目にもしるく若葉しぬ 花蓑

白秋
若葉どき雲形定規かきいだき学生は行く燃ゆるその眼眸

裏木戸やばさとかぶさり雨若葉 泊雲

幌の紗のしばらくかげる若葉かな 万太郎

歩くまもそこらほぐるる若葉かな 水巴

宇治に仰ぐ日月白き若葉かな 水巴

盧遮那仏若葉ぬきんで慈眼す 茅舎

水晶の念珠に映る若葉かな 茅舎

雨音につつまれ歩く若葉かな たかし

笋の頭に見ゆる若葉かな 普羅