日盛や綿をこあむりて奪衣婆
大どぶにうつる閻魔の夜店の灯
侍者恵信糞土の如く昼寝たり
昼寝比丘壁画の天女まひあそぶ
昼寝覚うつしみの空あをあをと
飲食のうしとて昼寝びたりかな
繭を掻く町の外れの温泉寺
土手越えて早乙女足を洗ひけり
玉巻きし芭蕉ほどけし新茶かな
夏氷鋸荒くひきにけり
飴湯のむ背に負ふ千手観世音
翡翠の影こんこんと溯り
幾重ね金魚の桶をひらきけり
万筋の芒流るる蛍かな
蛍火の嚶珞たれしみぎはかな
蟻地獄見て光陰をすごしけり
花合歓に蛾眉ながながし午後三時
寒気だつ合歓の逢魔がときのかげ
総毛だち花合歓紅をぼかし居り
盧遮那仏若葉ぬきんで慈眼す
水晶の念珠に映る若葉かな
桑の実や苅萱堂に遊びけり
若竹や鞭の如くに五六本
双輪のぼうたん風にめぐりあふ
月白し牡丹のほむら猶上る