川端茅舎
まひまひの水輪に鐘の響かな
杉の秀に炎天澄めり円覚寺
鮎の尾の光る拳を上げて笑む
老松の下に天道虫と在り
日盛の汚れし鶴と写生子と
栗の花ベンチに落ちてかく太し
玉川の砂利に閊へて屋形船
月島に煤けし雲の峰崩れ
緑蔭に七宝の蝶紋をかくさず
昼寝覚五重の塔ののしかかり
昼寝ざめ身体髪膚百合に沁み
空蝉のすがれる庵のはしらかな
無為にしてひがな空蝉もてあそぶ
朴の花匂ひあわゆき舌に溶け
朴の花咲きしより夏寒き日の続く
牡丹を垣間見賞めて行くことよ
はたた神過ぎし匂ひの朴に満ち
多羅の葉にこぼれてえごの花盛り
卯の花に昼の稲妻ただ黄いろ
船窓わ掠めて鷭のしぶきかな
潮急に植田は鏡より静か