和歌と俳句

生き鮎の鰭をこがせし強火かな 久女

笹づとをとくや生き鮎ま一文字 久女

鮎やけば猫梁を下りて来し 久女

青々とつづく山あり鮎の里 石鼎

門川に囮の桶や鮎の宿 爽雨

鮎の籠提げて釣橋走り來る 虚子

月さして燠のほこほこと鮎を焼く 蛇笏

巌の苔をむしり游ぶや瀞の鮎 石鼎

深瀞に游なる鮎の群 石鼎

鮎宿の下駄の鼻緒を切らしけり 青邨

鮎籠のころがつてゐる厨かな 青邨

釣り暮るゝ人を呼びをり鮎の宿 爽雨

一つ巌のしたとうえとに遊ぶ鮎 石鼎

のぞきゐる山は丹波や鮎の渓 爽雨

鮎の宿塗は春慶づくしかな 青畝

百穂の鮎篝の図鮎の宿 青邨

鮎宿の窓の散らせる火の粉かな 爽雨

鮎川の橋を繭の荷ばかりかな 爽雨

鮎焼くや葛を打つ雨また強く 風生

鮎さしの鳴く音も雨の多摩河原 風生

山の緑に染まりて鮎を釣り暮らす 鴻村

岩めぐり鮎わき来るをいのちとも 鴻村

水に棲んでうす桃色や鮎の口 石鼎

浅みより水脈へと連るる鮎もあり 石鼎

鮎の背に一抹の朱ありしごとし 石鼎

瀬に棲んでTileのごとし鮎の頤 石鼎

一hの大鮎びくに漁もどり 石鼎

鮎釣の両岸にゐて竿上ぐる 立子

水鏡鮎澄むほどに吾も澄みぬ 鴻村

鮎掛に話しかくれば京言葉 野風呂

流れ藻を足にもとひて鮎掛くる 野風呂

手に握り魚籃に投込むまでの鮎 茅舎

鮎の瀬を淵へ筏は出て卍 茅舎

炙り鮎のかまでにまるく今年かな 石鼎

炙り鮎金色のいろにまるまると 石鼎

あぶら光り焼けて太しき鮎二つ 石鼎

とりあへずそこばくの鮎送りけり 占魚

鮎の尾の光る拳を上げて笑む 茅舎

鮎をやく山ざとならば寒からん 犀星

鮎笊をさげてぽんぽん橋を馳け 素十

吉野川ここにして鮎の瀬とたぎつ 草城

鮎の脊のみゆるがごとし吉野川 草城

鮎ほそく昼餉の卓に反りかへり 鷹女

鮎釣るをたそがれの瀬のとりまける 

鮎打つや天城に近くなりにけり 波郷

谷口の家二三軒鮎の宿 占魚

瀬に立てる鮎掛け二人棒のごと 占魚

月のいろして鮎の斑のひとところ 占魚