塩屋まで蓬摘む子がの来てゐたる/p>
傘松の蔽へる苔に松露採る
錦川落花をうけてよどみなし
錦川うつせる花に早河鹿
枇杷買のカンテラさげて島渡り
大島や枇杷をたづきの七ヶ村
日本海の波荒き日も枇杷ちぎり
北海の青潮下に枇杷ちぎり
枇杷もぐも枇杷選り居るも島娘
島山の鈴なす枇杷の皆熟るゝ
枇杷とる娘よく晴るゝ日を唄はずや
枇杷をとる娘が落したる黄楊の櫛
親舟にひかれてゆくも枇杷荷舟
六月の海照りつよく枇杷熟るゝ
笹叢を大山百合のぬきんづる
額の花手折らんとする沢深み
に話しかくれば京言葉流れ藻を足にもとひて鮎掛くる
若藤や筧玉鳴る常照寺
栗の花高嶺がくりも丹波路や
大島は海女の神なり浜おもと
万葉の歌云ひきかす浜おもと
暁の浜木綿の香をひとり占む
松風の落つ浜木綿にゐてあかず
十年の思ひ娘つれて浜おもと
浜木綿をさみしき花と君はいふ
浜木綿にかゞめる君を美しと思ふ
わだつみの神のかざしの浜おもと
大洋の雌波しくしく浜おもと
土用波大王岬に叫びたし
姫路城待宵草と暮れのこる
泳ぎ道木槿漸く花を終ふ
なんばんの葉垂れにふれて泳ぎ道
苧殻たくあとすぐさらひ走り波
迎火に跼む一家の顔浮ける
送り火や海より来とて掌をあはす
送り火に遠稲架のしきりなり
送り火は迎へ火よりも淋しかり
初秋の風大だもの千枝わたる
秋雨に鈴鹿旧道尚存す
沓掛の村それとさす花芒
馬子唄の鈴鹿はのこる葛の花
花芒鈴鹿陰晴定らず
権現の合歓の葉ゆれの禊川
鈴鹿越伊勢路となりて葛の雨
穂芒に茶屋わたらひも四百年
萩の雨はれてよき日の富士を待つ
東京も弁慶橋の曼殊沙華
東京の空とも見えず渡り鳥
秋風や線香よごれの義士の墓
八束穂を見てよろこびの旅にあり
秋の蝶ふれて揚りし旅衣
龍胆の一本なればつまで過ぐ
一度来し記憶の如き秋の寺