紫蘇ばかり薄紫のあき家哉 子規
茂吉
桑畑の畑のめぐりに紫蘇生ひて断りて居ればにほいするかも
紫蘇の葉の影黒々と月夜かな 石鼎
紫蘇の葉や裏ふく風の朝夕べ 蛇笏
走り出て紫蘇二三枚欠きにけり 風生
紫蘇の香を激すと見れば妻が摘む 悌二郎
紫蘇濃ゆき一途に母を恋ふ日かな 波郷
紫蘇の汁なほ点々と陰に入る 誓子
四五歩して紫蘇の香ならずやと思ふ 楸邨
紫蘇の香にをりをり触れて黙りをり 楸邨
紫蘇青き日本にのこす幾日かな 楸邨
一天の青き下なる紫蘇の壺 波津女
紫蘇しぼりしぼりて母の恋ひしかり 多佳子
もの書けるひと日は指を紫蘇にそめ 多佳子
紫蘇の香や哀しくなりし母の齢 鷹女
枝を張る紫蘇のいづこを笑はんや 耕衣
紫蘇が枝を張ると雖も鴉過ぐ 耕衣
紫蘇青く遠嶺湧きたつ屋根の果 楸邨
酔は言に悲しみは目に紫蘇匂ふ 楸邨
飛行音そのまま紫蘇の血をしぼる 静塔