後拾遺集 好忠
御田守けふは五月になりにけり急げや早苗老いもこそすれ
後拾遺集 藤原隆資
五月雨に日も暮れぬめり道遠み山田の早苗とりもはてぬに
経信
早苗とる山田のかけひこもりけりひくしめなはに露ぞこぼるる
公実
いそぎとれ いまは早苗も おひつらむ 田子のもすそは あさしめるとも
顕季
わきもこが すそわのたゐに ひきつれて 田子の手間なく とる早苗かな
俊成
早苗をばかけしわが身よ奥手とも思はば頼みあらましものを
西行
五月雨に小田の早苗やいかならん畔のうきつちあらひこされて
定家
水まさる山田のさなへ雨ふればみどりも深くなりにけるかな
定家
早苗とる田子のをがさの騒ぐかなうち散る雨やふり増るらむ
俊成
おほあらきの浮田の早苗生ひにけりまきのしたくさとりなまがへそ
俊成
早苗とるとはたのおもを見渡せば幾波あらむ田子のを笠よ
俊成
種まきしわさだの早苗うゑてけりいつ秋風の吹かむとすらむ
定家
うゑくらす緑の早苗さとごとに民の草葉のかずも見えけり
定家
小山田のむろのはやわせとりあへずそよぐ稲葉のころやまつらむ
続後撰集 雅経
里とほき たなかのもりの 夕日影 うつりもあへず とる早苗かな
続後撰集 土御門院御製
さなへとる 伏見の里に 雨すぎて むかひの山に 雲ぞかかれる
続後撰集 順徳院御製
みねの松 入日すずしき やまかげの すそのの小田に 早苗とるなり
続後撰集 右兵衛督基氏
今はまた 皐月きぬらし いそのかみ ふるのあら田に 早苗とるなり
続後撰集 前内大臣基家
やまかげの 小田のしめ縄 ながき日の くれかかるまで とる早苗かな
続後撰集 少将内侍
今日いくか ぬれそふ袖を ほしやらで おりたつ田子の 早苗とるらむ