口なしの花さくかたや日にうとき 蕪村
口なしの淋しう咲り水のうへ 青蘿
一葉
誰もかくあらまほしけれこの花のいはぬに人のなほもめづらん
一葉
おもふ事いはねば知らじ口なしの花のいろよきもとのこころも
節
耳なしの山のくちなし樹がくりにさく日のころは過ぎにけらしも
晶子
夏ちかく君見むきはにわづらひて小床に嗅げるくちなしの花
八一
さみだるるせとのをばやししたぐさにけさをにほへるくちなしのはな
宵のくちなしの花を嗅いで君に見せる 放哉
くちなしの日に日に花のよごれつゝ 立子
何だかなつかしうなるくちなしさいて 山頭火
口なしの花は文の褪せるごと 草田男
酔ざめはくちなしの花のあまりあざやか 山頭火
山はひそかな朝の雨ふるくちなしの花 山頭火
山梔子の蛾に光陰がただよへる 蛇笏
山梔子に提灯燃ゆる農奴葬 蛇笏
くちなしの夕となればまた白く 青邨
くちなしに傘さしいづるあめのおと 蛇笏
くちなしの香を嗅ぎて寄るひとのあと 誓子
香をわすれてはくちなしに近づけり 誓子
くちなしの匂ふこの家に今暫し 杞陽
梔子のあたり死神さまよへり 鷹女
くちなしを艶なりといふ肯はず 虚子
山梔子の花の晴間へ乳母車 汀女
山梔子の香が深き息うながしぬ 汀女
留守の戸はくちなしの香がかはりかな 楸邨
くちなしの香の間近なるピアノかな 汀女
今朝咲きし山梔子の花の又白きこと 立子