蝶ひとつ竹に移るや衣がへ
更衣うすき命を祝ひけり
散けしの中に生る ゝ仏かな
摘ずとも花あり香あり白扇
はなのうへにこ ゝろ皆置牡丹かな
芍薬はかよわき花のうてなかな
白芥子の美人かくるゝ草の庵
白罌粟に照りあかしたる月夜哉
杜若ものゝすゞしきはじめ哉
鴛鴦のかざしの花かかきつばた
卯のはなのさなみに曇る沢辺哉
我宿の山梔子しろし杜宇
蜀魂なくや矢をつく雨の中
山一里われを送るか諌皷鳥
あやめ草綾の小路の夜明かな
植つけし夜は三日月の門田かな
覚えんとすればとぎるゝ田唄哉
我庵はひる寐する間に青田かな
薮かげやさゆりの花にとぶ 蛍
笹の葉の夜散ほどや飛ほたる
昼の鵜の現に鳴か籠のうち
世わたりや鵜縄の上も十二筋
聞うちにすゑまぼろしの水鶏哉
おもしろやふりむく鵜あり行鵜あり
あだ花の猶なつかしや瓜のはな