はる雨の赤兀山に降くれぬ
色深し今年よりさく桃の花
月も山も其ほとり也はつざくら
寺も世をたのむこゝろや八重桜
人をまたで散るはさくらの誠哉
松の奥うすうす暮る桜かな
浪の間はさくらうぐひや岸の花
散る花や夢かとぞおもふ袖袂
ぬれ蓑に落花をかづく山路哉
盃の流るゝはなの絶間かな
山吹や池をへだてゝ入日さす
山吹も世につながるゝたぐひかな
浅茅生にめぐり初けりはるの水
す ゞりにも茶にもうれしや春の水
春秋も常のこゝろを松のはな
あまのりは江戸紫の匂ひかな
夕汐や月踏砕く小貝取
如月に取つく野辺の景色哉
井のもとも菫薺のはる辺哉
はるの海遊びわすれて啼烏
門なみにさくや山家の梅椿
はるの海鶴のあゆみに動きけり
からし菜の花に春行なみだ哉
行春や飛かふ蝶の心はしらず
ゆくはるは麦にかくれて仕廻けり