和歌と俳句

海苔

衰や歯に喰あてし海苔の砂 芭蕉

苔汁の手ぎは見せけり浅黄椀 芭蕉

海苔すくふ水の一重や宵の雨 蕪村

生海苔の波打際や東海寺 召波

あまのりは江戸紫の匂ひかな 青蘿

生海苔のここは品川東海寺 漱石

新海苔や肴乏しき精進落 子規

燈台の人も岩海苔掻く日かな 碧梧桐

雪しろに海苔粗朶浮いて流れけり 鬼城

大海に流れむとする海苔を採る 普羅

海苔干すや船出払へる磯日和 淡路女

白秋
海苔とるとたづきありけり朝びらき小舟揺ちゆく棹手かなしも

白秋
海苔の田は上潮寒き海朶の間に逆さの不二が白う明り来

老の手のほとびて白し海苔の桶 虚子

てのひらの上よそよそと流れ海苔 虚子

棹見えて海苔舟見えず粗朶隠れ 虚子

岩の上に傾き置きぬ海苔の桶 虚子