和歌と俳句

彼岸

精進すなといはれし親の彼岸哉 来山

渡し舟武士は唯のる彼岸哉 其角

くもりしがふらで彼岸の夕日影 其角

くく立の花うちこぼす彼岸哉 支考

何まよふひがんの入日人だかり 鬼貫

命婦よりぼた餅たぼす彼岸哉 蕪村

起々に蒟蒻もらふ彼岸かな 太祇

うばかゝのさくらを覗く彼岸かな 太祇

傾城に菎蒻くはす彼岸哉 几董

彼岸とて袖に這する虱かな 一茶

毎年よ彼岸の入に寒いのは 子規

珠数ひろふ人や彼岸の天王寺 子規

牡丹餅の昼夜を分つ彼岸哉 子規

牡丹餅に夕飯遅き彼岸かな 虚子

老若や彼岸詣りの渡し船 虚子

門前を彼岸参りや雪駄ばき 漱石

庭芝も茜さしたる彼岸かな 龍之介

尼の数珠を犬もくはへし彼岸かな 蛇笏

山寺の扉に雲遊ぶ彼岸かな 蛇笏

お彼岸のすから啼き居る鴉かな 石鼎

彼岸会のお日のくもりもありがたや 石鼎

彼岸会を燃えて居るなり大香炉 石鼎

彼岸会や池をめぐりて詣で人 夜半

手に持ちて線香賣りぬ彼岸道 虚子

うとましや彼岸七日の晴れつづき 万太郎

うつくしき尼にまみえし彼岸かな みどり女

浮葉みえてさざ波ひろき彼岸かな 水巴

連翹は雪に明るき彼岸かな 水巴

折本のお経拾ひし彼岸かな 喜舟

ちる梅の萼紅ゐや彼岸寺 石鼎

風晴れて夕となりし彼岸かな 石鼎