和歌と俳句

彼岸

すこし寒い雨がふるお彼岸まゐり 山頭火

お彼岸まゐりの、おばあさんは乳母車 山頭火

お彼岸の鐘ききとむる樵夫かな 蛇笏

彼岸道いま踏切のあきしかな 万太郎

あかあかと彼岸微塵の仏かな 茅舎

齢とれば彼岸詣りも心急き 虚子

山の端に宝珠のまるき彼岸かな 青畝

くにはらの水縦横に彼岸鐘 蛇笏

彼岸会の故山ふかまるところかな 蛇笏

ゆつくりと山懐の彼岸鐘 青畝

雲に古る扉の花鳥彼岸寺 蛇笏

長谷寺に法鼓轟く彼岸かな 虚子

牡丹餅に夕飯遅き彼岸かな 虚子

手に持ちて線香賣りぬ彼岸道 虚子

茂吉
眞白なる色てりかへす時ありて春の彼岸の来むかふ山山

茂吉
春彼岸に吾はもちひをあぶりけり餅は見てゐるうちにふくるる

茂吉
すこやかに家をいで来て見てゐたり春の彼岸の最上川のあめ

あをぞらの藁屋根ひたす彼岸かな 万太郎

行きあひし尼に会釈の彼岸道 虚子

大法話いまつづきゐる彼岸かな 青畝

お彼岸や末寺の尼ぜ本山へ 立子

彼岸雨詣でし墓を傘の内 蛇笏

尼が門の低きを開けて彼岸来る 爽雨

誘ひあひ彼岸詣りの老姉妹 立子

すぐかたくなりし彼岸の団子かな 万太郎

彼岸の日朴の幹にも傷多し 波郷

沼に沿ひ杖を漕ぎゆく彼岸婆 不死男

師を仰ぎ春の彼岸の入盈ちぬ 波郷

彼岸会やすべて有髪の墓ならで 静塔

大鴉一樹に一羽彼岸墓地 みどり女

彼岸鐘目高輪になり輪の光り 林火

彼岸鐘草木聞けり鳥聞けり 林火