和歌と俳句

蘆の角 蘆の芽

曳船やすり切つて行く蘆の角 漱石

舟軽し水皺よつて蘆の角 漱石

蘆芽ほぐれて汐泡の離れゆく 亜浪

風落ちて窪める水や蘆の角 虚子

船橋の浅き汀や蘆の角 虚子

めぐる泡絶えず顫へて芦の角 泊雲

水にうく日輪めぐり蘆の角 爽雨

廃園の門とし見れば蘆の角 秋櫻子

蘆の芽や少年釣れるうき真赤 爽雨

いと長けて蘆の芽いまだ水を抽かず 櫻坡子

大方は泥をかぶりて蘆の角 虚子

風波をかぶりかぶりて蘆の角 立子

末黒野もいつしか青み蘆の角 石鼎

潮引けば江の水もひく蘆の角 石鼎

蘆の芽に舟踏みあそぶ水輪かな 石鼎

斐伊川のつゝみの蘆芽萌え初めし 久女

蘆芽ぐむ古江の橋をわたりけり 久女

蘆の芽に上げ潮ぬるみ満ち来なり 久女

上げ潮におさるゝ雑魚蘆の角 久女

白魚舟枝川戻る蘆の角 秋櫻子

蘆の芽のかたき決意に触れて来ぬ 鷹女

日の当る水底にして蘆の角 虚子

蘆の芽に風おとづるるひかりかな 万太郎

芦の角昔の水の流れ来る 汀女