和歌と俳句

臼田亞浪

山吹ののこらず咲いて霖雨かな

春寒や生姜湯かぶる風邪籠

咲いて碓氷の水の冷たさよ

暖かや首のべて駱駝うづくまる

蘆芽ほぐれて汐泡の離れゆく

我が影に家鴨寄り来ぬ水の春

岬黒み来し風前の帰雁かな

げんげ田や鋤くあとよりの浸り水

雲雀落つ谷底の草平らかな

蒲公英の毛花吹くほどの風に立つ

葱掘つて土ぼそぼそと春寒き

隣から吾子呼んでをり沈丁花

夜明けから雀が鳴いて暖かき

石蹴りの筋引いてやる暖か

朝寝して犬に鳴かるる幾たびも

かざす手の血の色ぞよき啼く雲雀

春風や軽塵ほのと路の草

落花相寄るたまゆらの風ほのか

垣の山吹咲けばむしるよ行きずりに

木より木へ通へる風の春浅し

日も春の浅間根つづる桃櫻

浅間ゆ富士へ春暁の流れ雲

風落つるさまなき夕日照る辛夷

如月の烈風釘を打つ音す